小松秀樹『医療崩壊』 |
車は直りましたが、本日の学会には間に合いませんでした。 修理を待ちながら1冊読了。これも東京の友達から貰ったものです(bk1)。 前のエントリーで、小松氏の前著作については触れましたが、基本的な路線は変わらず。 ただし、著者自身が勉強を重ねた故なのか、編集者が代わったからなのか、原因はわかりませんが、前作にあった読み辛さが改善されたのは大きいです。 内容的には前作同様、開業医のおかれた窮状を伝えると伴に、各部門への数々の批判を辛口の口調で展開しています。 キツい口調ですが、そんなに不快感は無いですね。ちゃんと自分の間違いは増刷の際に、修正しているあたり、正直な人間性を感じさせますし。あれだ、無茶苦茶だけど憎めないキャラってあるじゃないですか。そんな感じ。 その批判は、マスコミの偏向報道、司法の不勉強、大学の医局システムの問題、政府の医療政策…身内/外問わず向けられますが、特にマスコミと警察に対してはかなり攻撃的な言い回しが為されています。 一方で、製薬メーカーや医療機器メーカーなどは批判の対象から外れていたりもしますが…単行本一冊で医療業界の構造的問題を全て指摘するのは無理があるので、しょうがないでしょう。 前作との大きな違いは、①筆者が標榜する医療倫理の基礎が、井上達夫の「共生の作法」に置かれたこと、②「立ち去り型サボタージュ」という類型を作り出したこと、③医療ADRの提唱、だと思います。 ②は、勤務医の現況を示す言葉ですね。開業医の方が儲かるし、責任も無いので、職場環境に問題やストレス抱えている中堅どころの勤務医が開業医に流れる現象のようです。さらに、勤務医不足でさらに環境が悪化→医療崩壊と。 ①については、要するに「お互いわかりあえない立場・価値観の人(共感できない人)でも、対話の相手を道徳的存在と捉え、(共感を超えた)寛容の精神を持って議論を続けること」が重要だという点に、小松氏は賛意を示すようです。これは、医療従事者-その他の話に留まらない訳ですが、医療に限定すればその対話の場所が整備されてないと(訴訟携帯はマズいと)。だから、③のADRの話が出てくる訳ですね。 論点は色々あるのですが、医療ADRの話に関しては、やはり透明性をどう担保するのかが鍵でしょう。小松氏の著作の影響力があってかどうかは知りませんが、政府もその筋を検討している模様。 ただ、やっぱり、マンパワーが不足している気が。検死を行う法医学の医師も、日本はめちゃくちゃ少ないし。また、捜査権限の問題もあるんで、ADRで解決できないときは警察が入るのもやむを得ないケースも残ると思うのですよね(著者も指摘しているけど)。 って、問題が簡単でないからこそ、こういう本が売れる訳だが(ぉ。 ちなみに、実家から帰って来ました。 祖母がかなり調子を落としていてショックでした。血管に問題があるようでカテーテル術を採用するようです。手術自体に耐えれても、その後どうなのかが心配ですよ。┐(゚〜゚)┌ |
by vla_marie
| 2007-06-22 23:10
| 本
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