パートナーの同意無き凍結胚の利用は認められない |
3月8日付けの英Times紙が、パートナーの同意が無いために、以前凍結した胚を用いて子を得ることができなかった女性について報じている(記事)。 報道に依れば、ナタリー・エヴァンスさん(34)は卵巣癌治療を受けるにあたり、2001年当時交際していたジョンソン氏との間で作られた胚を凍結していた。手術は成功したが、エヴァンスさんは卵巣を失った。2002年にこのカップルは破局し、ジョンソン氏は胚の処分を申し出た。 エヴァンスさんは、これを不服とし、「遺伝上繋がりのある子を得る最後のチャンスを奪われる」などとして上訴裁判所(Court of Appeal)、高等法院(High Court)、そして上院(House of Lords)にも訴え出たが認められなかった。そのため彼女は欧州人権裁判所(ECHR)に訴え出る道を選んだ訳である。しかし、ECHRも彼女の訴えを認めることは無かった。 Times紙のこの記事は、判決自体に異議を唱える論調ではない。こうした事態に備えて、胚の凍結ではなく、卵を凍結するという選択が女性にはあるということを示している。重要な要素が化学物質である精子と異なり、生体の細胞である卵は長らく凍結保存が容易ではなかった。しかし、近時の技術の発達により凍結卵の70%までは正常に機能する状態で保存することが可能となっている。胚の場合と異なり、卵の場合は女性個人の意思で利用を決定できるため、こうしたオプションを選択すれば良かった、と記者は記している。 胚の共同作成者であるパートナーの権利を男女共に平等に扱う国が世界的には多いと思われる。イギリス、フランスがそうであるし、日本も(まだ法的な取り決めはないものの)夫の同意無き凍結胚の利用は認めない方針である。 しかしながら、実務としてはカップルが揃って不妊治療に訪れるケースは少なく、夫の死後に凍結精子を利用して子をもうけるなどの例が出てきている。チェック機構が甘いのだ。 ところが、記事を読むとハンガリーはそうではないようである(女性の子を持つ権利が優先している?)。この辺り詳しくないのだが、なかなか珍しいことをしているようで興味深い。 |
by vla_marie
| 2006-03-10 05:14
| なるほど
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