『脳死再論』 +メモ(印度臓器移植法改正の話とか) |
立花隆『脳死』3部作の2つ目(bk1)。単行本としては1988年に刊行されました。 これは、同年1月の日本医師会生命倫理懇談会「脳死および臓器移植についての最終報告」が脳死を個体死と認め移植を容認し、脳死判定に竹内基準を採用したことへの反論として、中央公論で連載していたものを纏めた本です。 前著が参考文献などの充実具合からしても学術書に近い傾向だったのに対し、こちらはより一般向けに簡潔に主張が組み立てられています。こっちだけ読んでも話はわかると思います。 筆者の主張としては、前著の繰り返しです。 つまり、脳死はアリだけど移植目的ならば器質死を採用せよ。器質死を確実に判定するために、脳血流停止を判定項目に追加せよ。さらに、脳幹機能のより正確なチェックのために聴性脳幹反応検査を採用せよ…です。 この判定基準の問題については、2002年10月8日に日弁連が公表した『臓器移植法の見直しに関する意見書』(PDF)や2006年3月14日の『「臓器の移植に関する法律」の見直しに関する意見書』(PDF)が同様の主張をしていますな。もっともこちらは、2000年8月の厚生省研究班の改正案(町野改正案)とそれに続く改正案に対する反論の意味合いが強いわけですが。小児の脳死判定って…2008年現在の技術でどこまで正確さが担保できるレヴェルにあるのでしょうか?「まだわからない」というネガティヴなケースはよく報告を見かけますが。 以下メモ。 10日、射水市民病院呼吸器外し事件で、富山地検は元外科部長を書類送検する見込みだとニュースがありました(読売)。 9日、「後期高齢者〜」の新制度の問題で、日本医師会は「後期高齢者診療料」を算定しないように会員に呼びかけていることがわかりました。72の医師会がこれに応えている模様(CB)。 臓器移植関連。 10日、超党派の「修復(病気)腎移植を考える超党派の会」が病気腎移植容認の見解を示す方向であると伝えられています(東京新聞、中日、産経)。正式発表は13日とのこと。 つまり、宇和島のケースは各論としては問題があったかもしれないが、総論としては第3者の客観的な評価やICが充分であれば病腎移植もOK、ということですね。ところで、この超党派の会はメンバーの構成はどうなっているのでしょう?臓器移植法改正推進組とどの程度メンバーが被るのか、気になるんですが…。 12日、インドの臓器移植法改正で、本人の意思表示無くとも家族の同意があれば良いとする(所謂コントラクト・アウト)方式を採用する動きがあると報じられています(毎日)。臓器売買を減らすためにWHOの基準に乗り換えるとのことですが、日本の改正論議にも影響するでしょうか?あまり大きく報じられていませんが…。 11日、日本の臓器移植法改正3法案についての記事も出ていました(北海道新聞)。今国会でも改正は難しいと。 再生医療。 11日、ウィルスを使わない低リスクなiPS細胞の作成に成功と報道がありました(朝日)。iPSに関しては11~12日京都で国際シンポが開催されていまして(西日本新聞)、山中教授がiPSバンク構想を打ち出しています(毎日)。 一方のES細胞ですが、12日、ヒツジの体内でサルの組織を作成することに成功と、自治医科大の花園豊先生のチームが学会誌に報告されたようです(毎日)。ポイントは免疫抑制剤を使用していないところ。 移動しまくりの1日でした。さて、資料を電子化する作業でもやるか(ぇ。 |
by vla_marie
| 2008-05-12 23:53
| 本
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