『日本医師会 崩落する聖域』 +メモ |
今日日のマスコミはじめ井戸端会議の場では、「小泉構造改革の再評価」とかいうのがやたらに叫ばれていますね。医療面の話もしかり。 ここで実際に医療費を負担する保険者はもとより、医療関係者からも辛い評価ばっかりなされている気がします。私の祖母は、「医療費が無料だとコスト意識が生まれないので、老人も医療費を負担するようになって良かった(医療のありがたみがわかるから)。」なんて言ってましたが、少数意見のようですね。 そんな、医療構造改革のただ中にあった日本医師会のドキュメントが本書(bk1)。2001年12月から2003年4月にかけて、坪井会長(当時)率いる日本医師会が政治的発言力を失っていく過程を描いています。⇔とはいえ『医療崩壊』がブームになって以降、その潮流に載る形で、今日の医師会は政治的発言力を回復したかにも見えますが。 2003年の刊行ですが、(また)古書店で買ったので私は今回初めて読みます。時間を置いて冷静な頭でパラパラ読んだ感想として→やはり「場の熱気によって公論や政策が決定されるコトってあるよね(ポピュリズム?)」とマズ言っておきましょう。同じことは、今の『医療崩壊』や『医師不足』の議論にも言えることですけどね。特に、近時の世論の形成過程を見れば、メディアを牛耳るものが世論を制す面は無くもないし…。 色々要因はあるようですが、大まかに纏めれば、医師会が力を失ったのは以下の点にあるということか? 1).政府与党が医療改革を断行することを予見できなかったこと。 2).総論賛成各論反対で与党との調整を狙った執行部への、開業医からの反発が予想以上に大きかったこと。 3).三師会をはじめとした関連団体との調整・共闘に、ややゴタゴタがあったこと。 4).政治団体と利益団体との区分けが不明確、故に政策ビジョンと圧力団体としての要求の区分けが不明確、身内に甘いなどで、国民からの支持が受けにくい。 5).若手医師から、時代にあった医師会改革が内部提起されていたにも拘らず、十分な対応が為されなかったこと。 →結果として、医師会の結束力が低下し、政治への影響力も落ちた。 うーむ、古い体制を上手く刷新できなかったのが根本的な問題だとすれば、それは今もあまり変わらないような気がしますが…。 著者の水巻中正氏はジャーナリスト出身で、本書も学術書の扱いではないです。問題が動いているさなかでの執筆ということもあってか、ややスッキリしないところが多いのが残念。まぁ、今更これを読む方は、医療か福祉か政治学かなんかの研究者さんだけでしょうけど。 さて、2〜3メモ。 「無戸籍児童に、夫のDV証明があれば住民票発給」とニュースがありました(毎日)。戸籍は、日本独自のシステムなだけに、こういうケースの調整は難しいですね。 産科が遠いほど帝王切開が増えるという統計データが出たようです(山陽新聞)。お世話になっているあの先生の、研究チームか。。。 |
by vla_marie
| 2008-01-27 15:18
| 本
|
<< 『4分間のピアニスト』 | 出産事故に無過失補償制度 + ... >> |