『生命の尊厳とはなにか』 |
土日はセンター試験でラボが閉鎖だとか何とか。 実は、棟によって扱いが違うようですが、大人しくファミレスに作業場を移してみたら…やっぱり人が多くて。難しい作業は断念しました。 しょうがないので、「3時間以上の勉強お断り」な店内で(急いで)読み返したのが、A.カプランの邦訳書(bk1)。 この本は、新聞紙への連載エッセイがベース。 ですので、1).短く簡潔で毒の効いた文章、2).時事問題中心(原書が1998)、3).原理論より臨床・応用的問題が中心、という特徴があります。 内容は古く、訳語の選定が現代的な感覚と少し違いますが、文章自体は読み易い訳。現実に起きている問題を基に、帰納法的に生命倫理問題を考えてみるのには良いかな?カプランの共和党批判ぶりも読めるし。 一例を挙げると、こういう事例が載っています。 1995年にペンシルヴァニア州で起きた事件。 財務アナリストのジェームズ・オースティン(26)が、自分の精子を使って赤ん坊を産ませるために、インディアナポリスの営利団体「アメリカ不妊センター」を通じてインディアナ州のフィリス・アン・ハドルストン(26)を代理母として雇用。3万ドルと引き換えに赤ん坊を引き取った。 オースティンは2、3週間後に赤子の虐待を始め、幼児は頭蓋骨骨折ほかにより1995年1月17日に息を引き取った。 ここで、カプランが非難しているのは、虐待そのものはもとより、1).引き取り手の資質を(立法も視野に入れて)公的に審査しないこと、2).そもそもこれは人身売買なんでないの、ということでした。 現況、こういう事態が問題視されるようになり、米国の(一部の州にある)代理母斡旋センターでは、引き受ける人や依頼者のチェックが強化されていると聴きます(昨年末に聴いた情報ですが)。 なぜなら、問題の多い斡旋センターには客がつかないため。つまり、彼らは市場原理によって、ふるい落とされないように対策を講じているということで…本書執筆時のカプランの指摘が検討された訳じゃないのですよね。 実は、私は今回の共同研究に関係ある箇所があるかなと本を読み返してみたのですが、第3章にちょろっとあるだけで(しかも脚注等ついていないので)、あまり参考にはならなかったですね。 |
by vla_marie
| 2008-01-19 23:10
| 本
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