人気ブログランキング | 話題のタグを見る
excitemusic

くわぁんりんの日記
by vla_marie
ICELANDia
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
りんく
marioの部屋
後輩のブログです。可愛らしいです。北朝鮮(ry
のうてんきな舞々の毎日
後輩で、あのY氏の上司のブログ。就職オメ☆(祝
T957 CRAZY
私は魔法使いですが、彼女はイリュージョニストだそうです。
penepene nikki
ついに、学校の先生に!
飛び出し禁止
セレブOLの後輩です。飲酒→終電逃す→満喫のコンボが溜りません!
MY SYMPHONY
後輩のドラえもんマニヤのサイトです。
animate*life
後輩のVn使いのnixie君のブログです。
拜金女郎
大学時代の友人の奥様のブログです。
よいこのにつきちやうFC2
FC2にも進出。
最新のトラックバック
検索
タグ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


『クローン人間の倫理』

 イタリアの医師、アンティノリが「クローン人間産生に成功」を公表したのが(真偽は不明)2002年。この本の出版は2003年。タイムリーな時期に出たもんです。
 著者の上村芳郎氏はヘーゲル哲学・倫理学が専門とのことですが、(難解な哲学用語は控えめに)平明で分かり易い文章なので、対象読者層は広いと思います。(bk1)。
 ずっと前に購入して速攻読んだのですが、読み直したのでエントリー。

 この本の基本路線は、「クローンに関してはみんな誤解があるようだけど、ちゃんと理解すればなかなか「安全性」以外で問題なるようなことは少ないんだ。じゃあ、安全なら全面解禁で良いのかと言えば、いやいやもうちょっと考えないといけない点がある。」というもの。

 第1部では、これまでの漫画や映画でのクローン像から影響を受けている一般的なクローン観と、現実のクローン像とが違うことを指摘(遺伝子決定論を批判的に解説など)。

 第2部では、クローンに関するELSI(Ethical, Legal & Social Issues)を概説し、治療目的のクローン(Therapeutic Cloning)と生殖目的のクローン(Reproductive Cloning)との区別などについて触れています。
 この治療/生殖目的のクローンニングという言葉は98年のES細胞樹立以降欧米で広まってきた、我が国では粥川準二『クローン人間』(光文社新書、2003年)が指摘する通り、その言葉や概念の輸入・伝播には多少のタイム・ラグがありましたね。
 とはいえ、「脳死」が移植医療の必要性から作られた死の概念であると言われるように、この「生殖/治療」の区分も後者(すなわち治療目的)のクローニングを許容することを前提に作られた概念である…と言えなくもないので。そこら辺は、需要が遅れているから悪いとかそういう話にはならないのですが。。。




 また、途中にエンゲルハートを引用している箇所がありましたが、邦訳のある『バイオエシックスの基礎づけ』初版を参考文献に掲げていまして…これは良いのかな?第二版を引くべきでは。。。

 またこの第2部では、「危険だからというのみでは、禁止の理由足りえない」という点が示され(ex.高齢出産は禁止すべきか?)、クローンによるメリット/デメリットの勘案の必要性が示されます(p.87)。

 各国の法規制の状況もこの第2部に解説があります。フランスについてはpp.95-97。フランスでは「人間の尊厳」は「唯一性と自律」にという点に明確されていると記載があるけど…これで良いのか?他にも議論があったように思うけど→要確認!

 第3部では、クローン人間禁止に関する倫理学説の紹介が為されます。
 議論の背景となる理論的前提は、1).ヒューマニズム(平等・相互性・共感)2).人格の自己目的性(カント)、3).自己決定権・自由主義、4).功利主義に整理され(p.171)、筆者は1).と2).に感心があるようでした。
 ここでは、「自己の同一性を損ねる」という批判は"外部"から見る限りは遺伝子決定論に基づいているから支持できないし、クローニングによって産まれた子にとっては「心理的」な側面の問題として扱われることになるといった話が出ます。

 また、「自然の生殖に反する」という批判における"自然"は社会的に作られたものであり(ex.ギリシャ時代には「少年愛」が尊ばれた)、現代の「セックス=自然な生殖」観は作られたものであるということをフーコーを引き合いに出して論じた上で、生殖の"自然"に反するというのは理由にならないと論じています。
 しかし、別のところで筆者は、社会一般に流布しているドクサ(思い込み)は倫理的な根拠足りえないが、熟慮討議の上で精錬された価値的なものに高められるならば傾聴に値するものとして見る…ような議論(違うか?)もしているように読めます。とすれば、概念的・価値的に現行の"自然"観が支持されるならば、それが事実的な"自然"でないからと言って、「自然の生殖に反する」という主張に理由は無いとは言えないのでは?


 第4部では、これまでの議論の紹介や説明を踏まえて、クローン人間の是非について論じています。基本的には、「手段化」(カント)に陥らなければ、生殖目的のクローンは許容されるという主張。
 この主張自体は他でも見られるもので、「手段としてでなければ、つまり目的としてであればクローンは許されるのならば、(完全に手段として子を産むことはほぼ無いし)それは規制の根拠になるのか?」といった批判が良く為されていますね。

 この本、ちょっと議論が大雑把なところがあるので、学術書としては色々突っ込まれても仕方が無いようにも思えます。
 ただ、話の整理はされているので、教科書的な位置で売り出していれば(そして、装丁ももっと取っ付き易いものであれば)、高評価だったかもしれんですね。

P.S.さっき深夜放送で『虹の女神』をやっていました。
 桜井亜美は好きなのでつい見てしまいましたが、映画としては上野樹里の中性的キャラが立っていた…くらいですか。ちょっと、話の流れも絵の撮り方も"狙い過ぎ"な観はあります。
 BGMにホルストの『惑星』が多用されているのには笑いましたよ。金星のVnソロも印象的に使われていたし。
by vla_marie | 2007-12-28 23:59 |
<< 忘年会チクルス終了→年末準備 ほか 『人間改造論』 >>