『クローン、是か非か』 |
クローン問題を扱ったエッセイ集(中心はシカゴ大のメンバー)。 原書は1988年(邦訳は1999年)に出たということで、10年前の議論です。 邦訳出版社の方で日本語の書評も掲載されていました(産業図書)。 先日、古本屋で"帯付き"で売られているのを購入しましたが、その帯には「ヒト・クローンはつくってはいけないのか」と書いてありました。 実はこれは、ドリー以降10年後の今でも、なかなか答えにくい難問です。(最終更新:20 février 2008) 現在は、我が国でも法律によって規制があるので、(完全な固体としての)ヒト・クローンの産生は禁止されています。ですので一応は、「法律があるからつくってはいけない」とは言えますが、じゃぁ、その法律自体にに正当な根拠があるのかどうか、考えてみればそう簡単ではありません。 おおよそ、「技術的な安全性」の問題を除いては、どのような立場の人にも共有可能で説得力のある理由・理屈は、なかなか見つからないのではないかと言われています(強い「遺伝子決定論」を採用するのであれば、他の理由もそれなりに展開できるかも)。 本書はライトな文体のエッセイが多いので、結構サクサク読めます(訳も読み易い)。 笑えたのはR.ドーキンスの批評「クローニング、何が悪い」でして、最近彼は『神は妄想である』(bk1)という物騒な本を出しています。 本書の中でも彼のアンチ宗教ぶりは発揮されており、科学に首を突っ込む浅学な宗教家たちをこき下ろしています。クローン自体の批評は…少ない(笑。 C.R.サンスティンの「憲法とクローン」は、もし仮に後の世に「クローン産生を禁じる法律は憲法違反だ!」という訴えがあったとき、連邦最高裁はどう対応するかをシミュレートしたもの(合憲説/違憲説の2つの結論有り)。実はこれ目当てで購入。 でも、結局どっちが好ましいかはサンスティン自身は結論付けていません。そこのところは、別のエッセイでも明示していない様子ですね、こりゃ(参照)。 サンスティンは、公共政策を論じる場面では、手続重視型の現代的民主政治において、手続創設時に置ける政府の役割・影響を指摘したりしていたはずなのだけど。人権論はどうだったかなぁ…復習しないと。 追記:クローニングに関するウィルムット博士らの邦訳(中村桂子 訳)が掲載されていることも、メモしておこう。 10年前のこの本を眺めて、議論の深化はそう簡単には進まないものなんだなとつくづく思わされました。 昨日タイヤの交換を済ませて、ようやく冬の仕度が整いました。これで雪が降っても大丈夫です。 作業用BGMは、J.S.バッハの「無伴奏Vnソナタ&パルティータ」。Naxosのファン・ダール盤を久々に聴きました(他にも何種類か選んで連続再生)。 パルティータ第3番、メヌエット1のフレージングは斬新ながら、何度も聴いているとこれが当たり前に思えてきますね。今度練習する時にやってみよう。 |
by vla_marie
| 2007-12-22 07:37
| 本
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