根津院長が「代理母」募集(追記 |
生殖補助医療領域で何かと世間を騒がせている諏訪マタニティー・クリニックの根津医師。 彼は、以前から「無償」の代理母には肯定的な見解を繰り返し、自前で「代理母」の募集をやっていましたが40人もの応募があったようです(読売)。 以前、根津医師が実施したケースはいずれも身内からの代理母でしたが、今回は第三者が代理母として募集されている点が特徴でしょうか。 わが国では代理母は法制化が為されていないため、施術が行われたとしてもこれを罰する規定はありません。基本的には刑事罰の対象にはならないはずです。 「有償」で代理母を雇った場合はこの限りでなく、「人身売買罪」の適用の余地があるかも。 以前、根津医師、代理母は「謝礼」は受け取ることが出来る、だけど「報酬」を要求する権利は無いとする自論を展開していたけれど…、ここでの「謝礼」の範囲がどこまでなのかは結構微妙。。。 ただ、代理母に対して死ぬ可能性も家族と相談することを、根津医師側が要求している慎重さから見れば…実施する側としても法的問題が皆無とは思っていないのでしょう。(最終更新:27 aôut 2007) そもそも、代理母が純然たる医療行為なのか否かというところには疑問が呈されています。医療行為として正当化されるには、1)治療目的+2).方法の医学的妥当性+3).患者の同意(IC)が要されるとされていますが、実際医師が行う医療行為には治療目的なのかどうか怪しいものがあります(ex. 美容整形)。 翻って、非医療従事者の行う行為ではあるが、エステティシャンはその行為を「医療行為」と言うことは出来ないし、音楽療法も「医療行為」ではない(とは言えない)。 医療行為にあたらないとすれば、いくら医師が行ったからと言ってもそれは傷害罪を構成します。ここでは、いわゆる同意傷害の問題が生じるでしょう。 美容整形のケースと違うのは、美容整形が本人の治療目的で行われるのに対し、代理母のケースは他人の治療(?)目的で自分には(医学的・客観的)利益が無い点です。 ここは、議論のある所ですが、根津医師側とすれば医療行為たり得ると考えているからこそ、施術の適用を不妊治療に限定する姿勢を採っている…と思われます。 また、民事上の問題としても、代理母契約が有効か無効かについて争いがあります。 これも、色々説がありまして…「有償」のケースは人身売買にあたるから無効なんてことも言えるでしょうし、一方で、金銭のやり取りがあろうが無かろうが公序に反して無効だ(ex.契約を認めれば、子の引き渡しを強制履行することになると思われるが、それでいいのか?)、とも言えるでしょう。複雑。 個人的な最大の疑問は、「代理母に応募した人って、どういう動機で応募したんでしょ?また、どういう立場の方なんでしょ?」ってことです。 だって、(無償だし、)一方的に自分にリスクがある行為(懐胎・出産)を引き受ける訳になると思うのですが?そんなに妊婦になる行為には楽しみがあるのでしょうか? 正直、立法の手当が無いままに、「代理母」行為を推進するのはリスキーです。 だから、根津医師も実施は控えるとのこと。こうした取り組みや代理母志願者のアンケートなどを法制化の参考にして欲しい…なんて言っておられます。フム。 追記:新しいニュース・ソースがいくつかあったので紹介(産經、日経、毎日)。 AIDで生まれた方が「出自の事実を両親に隠されていたことがショック→出自を知る権利を認めて欲しい」と現況での代理出産に否定的な姿勢を示していますね。 とは言え、今回の日本学術会議の意見聴取は、推進派にしても反対派にしても個別的な意見ですし、どこまで議論に反映されるのだろう…。 かと言って、使える統計的なデータがふんだんにある状況にも無いようにも思いますが。 体外受精児の調査については、厚労省などが既に(健康調査を目的とした)追跡調査を行っていますが(読売、AIDの場合…。 何らかの理由で(AIDの事実を隠したい場合とか)、親側が調査に非協力的になるケースなんかがありそうな気がするんですが? |
by vla_marie
| 2007-08-24 04:32
| なるほど
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