チャウシェスク政権下の正教会 |
風邪は治りかけなのだけど、鼻がズルズルしていたのでどうも子音の発音が巧くできません。 今日の仏語レッスンでは、銀行でお金をexchangeするシーンの会話について授業がされました。 先生:「日本には通りでお金を交換している所はないわね。ルーマニアには沢山あるのに!」 私:「町中には無いですね。また、都市銀行など大きな銀行はユーロを用意しているけど、小さな銀行はドルを扱う所が主です。」 先生:「日本ではユーロの流通は少ないわね。そういえば、ルーマニアもEU加盟すればユーロがもっと流通するのに、東欧諸国と西欧の間にはいくつか問題があってなかなか加盟が難しいのよ。」 私:「問題があるですって?でもEUは同じキリスト教圏の国家の集まりなので、遅かれ早かれいずれ東欧もEUに加盟するでしょう?日本のコメンテーターには「イスラム教国のトルコの加盟に比べて、東欧の加盟はそれほど難しくない。というのも、文化的・宗教的なバックボーンを共有しているから。」と説明している方も居ますよ。経済的問題はあっても宗教的・文化的に近しいのならいずれ加盟が許されるように僕には見えます。」 尚、ルーマニアは2007年からEU加盟が予定されています。 などと会話をして、話の流れがだんだんルーマニアの宗教問題に移って行きました。 ちなみに、英語と仏語をチャンポン状態で会話なのです(仏語のみで話せればいいんだけどねぇ…)。 先生:「確かに、トルコに比べてなら問題は少ないわ。でも、宗教的にも正教とカトリックは違うのよ。例えば、イースターの様式が違うし、また、洗礼のやり方も違うわ。カトリックは頭に聖水を振りかけるだけだけど、正教では赤子を水に浸けるのよ。それから、ルーマニアでは、チャウシェスク政権下でも人々が教会に行くのを誰も止めはしなかったのよ。」 私:「それは聴いたことがありますが、大半の日本人は知りません。また、正教とカトリックの間の違いもそれほど重要だとは思われていません。さらに、皆がこう思うでしょう「(宗教を忌避するはずの)共産主義者が、なぜ教会に行くのか?」と。」 先生「確かに日本人は知らないわね。多くの日本人から同じ質問を受けたわ。でも私の知り合いのコミュニストたちは皆教会に行っていたわよ。この写真を見て。私の結婚式の時の写真だけど、教会で式を挙げているでしょ。この隣の人は共産党員なのよ。」 私:「それはとても興味深い問題です。」 先生:「チャウシャスクはいくつか政治的間違いを犯したけど、宗教的にはそれほど悪くなかったわ。彼が破壊した教会はブカレストでたった3つ、それも重大な建物を建築するために壊したものです(無駄に壊したわけではない)。」 私:「そのチャウシェスクの政策は、彼の宗教的信念からなのか、あるいは、政治的な判断だったのか…?」 先生:「私にはわからないけど、周りの共産党員も皆普通に教会に行っていたし、チャウシェスクも内心では正教徒だったと思うわ。」 私:「政策の内容としてはどうだったのですか?日本では、一般的にコメンテーターや学者の言うところでは、政教分離政策には2つのスタイルがあると言われています。一方はフランスに代表される敵対的政教分離、他方はアメリカに代表される不干渉型の政教分離です。チャウシェスク政権では宗教的には不干渉だったのでしょうか?」 先生:「他民族・他宗教国家のアメリカとは違うわね。ハンガリー系カトリック教徒も居るけど、ルーマニアでは殆どの人が正教を信じているし、また、学校での宗教教育もチャウシェスク時代には禁止されていたのよ。今では、宗教教育の時間に神父が呼ばれてくる学校もあるし、来ない学校もあるし…そんな感じだわ。」 私:「なるほど、それはちょっと特殊ですね。現況の宗教教育のスタイルはイタリアのケースに近いのかな…。」 先生:「イタリアのことは知らないけれど、カトリックの制度はそれほど良くないと思うわ。正教では神父の婚姻を許しているけれど、カトリックは許していないのでしょう?家庭を持つことを許さないだなんて!」 私:「その件については日本でも報道が為されています。カトリックでは神父になろうとする若者が減少傾向にあると。理由は結婚ができないからと言われています。」 先生:「ええ、重大な問題よ。」 私:「まぁ、日本人はそのことをたいして重要な問題と捉えていないですけどね。。。」 今思うに、極端な共産主義者は「私有財産が経済的格差を産み出し、そこから疎外が生じる。」と考えるので、国家レベルでの広い意味での人的繋がりは重視しても、家族という狭い単位での人的繋がりはそれほど重要視しないと思うのですが…。やはりルーマニアの共産主義というのは、結構特殊な様相を呈していたのだと思います。 政治的レヴェルでは共産主義だけど、同時に宗教的には寛容というかむしろ正教に対する深い信仰に裏打ちされているあたり…結構面白いですね。 |
by vla_marie
| 2006-11-29 12:24
| フランス語
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