『私がしたことは殺人ですか?』+メモ(修正 |
川崎協同病院事件で殺人罪により執行猶予を言い渡された「須田セツ子医師による著書が、4月にでたよ」と、教えていただいたので購入しましたbk1)。2010年刊。 既にあちこちに書評・レビューが出ています(本が好き!)。 一つ一つの段落がかなり細かく分けられていて、読みやすい文章になっていることから、実際はかなり編集者の手が入っているのではないかと思います。一応隅々まで本人が書いているという前提で以下感想を。 上告に至った経緯についての叙述に、このようなものがありました。 「医療者として、私には控訴審判決にどうしても納得しかねるものがありました。…(中略)…どういうことかというと、それはひとことでいえば、患者家族の苦しむ姿に医療者が共感し、延命治療を中止することが「殺人罪」として訴追されても仕方ないことなのかという問題なのです。」(p.167) 須田医師は、医療者は個別の患者・個別の医療問題と向き合っていること、その中で家族からの要請に基づいて治療中止をすることは医の倫理に反しないことを本書のあちこちで繰り返しています。こうした主張の背景には、同医師が、医師と患者(家族)との特別な関係性、医療の特殊性を強く信じていることがあるように見受けられます。 ただし、医師本人が患者のためを思って決断したことであれ、家族が強く要請したのであれ、やはり、それは本人の意思と必ずしも一致するわけではないという指摘は以前からあるわけです(この問題については本件事件の控訴審判決も触れています)。 「よかれ」として治療中止をすることも、結果としては患者の死を招くわけで、それは慈悲殺にも繋がりかねません。 そうすると…そう簡単にこの主張に首肯する気にはなれない、というのが個人的な感想です。「勝手に殺すな!」と、死んでからその患者は言えないわけですし。 ほかにも、ちらほら気になる記述がありました。細かいことを指摘すると長くなるので、このあたりで止めておきます。 なお、この件に関しては、医道審で行政処分が検討されているとかと聴いたのですが…その後どうなったのでしょうか? 以下、ニュース・メモ。 6月1日、改正臓器移植法で新設された親族優先提供の規定により、第1号の移植(角膜)が行われたことが報じられました(朝日、読売、毎日)。無事、移植は成功だったそうです。 |
by vla_marie
| 2010-06-03 05:00
| 本
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