『殺人罪に問われた医師』 |
川崎協同病院事件の弁護人(大学教授)の方が書かれた本(bk1)。上告趣意の解説をやっているということで購入。 この本、どうも判決文を読んでもしっくり来なかった点が色々分かるのは○です。 例えば、「本件抜管行為が、(中略)治療行為の中止としてなされたものであり、実質的違法性ないし可罰的違法性がない」という弁護側の主張は…、違法性阻却としてこの点を主張しているのではなく、そもそも違法性がないから公訴するな(公訴権の濫用)を言っているらしい。これは、(主張の当否はさておき)判決文からだけだと分かりにくい…。 一方で、どの部分が編著者の書いている部分で、どの部分が他の弁護人(あるいは法律事務所の職員?)の書いている部分なのか判然としない点は、やや不親切な気もします…。 ただ、弁護団として内部で齟齬があったりするとアレなので、敢えて執筆者を明示していないのかもしれません。 本文中、「尊厳死(延命治療行為の差控えや医療行為の中止)とは、そもそも死期に瀕したときに意思表示できない者をも対象とするもので…(中略)…治療行為の中止時に患者が意思表示ができないというそれだけの理由で、司法が終末期を迎えた患者に自己決定権の利益を享受させないとすれば、憲法13条の自己決定権を否定する」(pp.122-123)との箇所は、訴訟戦略として憲法問題を入れたのか、あるいは本気でそう考えているのか…個人的には疑問があります。 無罪を主張するのであれば、当該行為の違法性が阻却されればそれで足りるわけで、憲法論まで持ち出す必要性があるのだろうか? |
by vla_marie
| 2010-03-10 23:57
| 本
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