『中国の血』 |
以前購入して放置していた(ぉぃ)中国のHIV問題をテーマとしたルポ本(bk1)。リベラシオンの北京特派員の方が書かれたものです。2005年刊、邦訳2006年刊。 公式報告でも既に30万人を超えるとされている中国のHIV感染ですが(産経)、その多くは1990年代に行われた売血によるものであることは最近まで余り知られていなかったと思います。 1992年以降、血液から作られるアルブミンやら免疫グロブミンやらの大きな市場を前に、多くの地方では農民から安価(50元)に血液を買う事業に乗り出しました。貧しい農民にとって売血は生計を支える大きな収入となりましたし、ついには非合法の血液収集センターも設立されていきました。 しかし、注射器の使い回しや遠心分離機の消毒をしなかったことにより、瞬く間に農村にはHIVや肝炎の感染が拡大することになります。 この問題が表面化すると、各地の血液収集センターは次々に閉鎖され、地方政府はHIVの事実を隠蔽しようとしました。特に、著者が取材した河南省では貧農が多いこともあり、感染の拡大は大きかったと。残された知識も金もないHIV感染者たちは、さしたる援助も治療も無いまま放置されているとのことです。 2003年のSARS問題以降、外圧により公衆衛生体制の改善に取り組まざるを得なくなった中央政府は、これまで秘匿してきたHIV問題にも手を付けました。しかし、整備をされた医療機関は一部しかなく、それも海外からの批判をかわすために用意されたに過ぎない。つまり、末端(地方)にまでは今尚十分な援助は行き届いていない。にもかかわらず、中国との良好な経済関係を望む外国政府はこの問題への厳しい追及を避けている…と筆者は書き綴っています。 もちろん中央政府の国家成長を求めるものと、地方役人の私腹を肥やすレヴェルとでは単純に比較できないものですが、いずれにせよ現代中国では何事もカネが基準なんだと思い知らされます。 筆者は鄧小平以降の拝金主義の蔓延を理由に挙げていますが、さて、現況中国では人の命の値段は安く買い叩かれるもののようです。 追記:赤脚医生のことについても一部記述がありました(p.184)。 |
by vla_marie
| 2009-02-03 23:56
| CD,DVD
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